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プロ野球選手の肘クリーニング手術の真実:復帰率82%でも見逃せない課題とは?

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【肘クリーニング手術とは?MLB選手に実施された最新手術の実態】

プロ野球選手にとって、肘の健康はキャリアを左右する重要な要素です。特に投手は、繰り返される投球動作で肘に大きな負担がかかり、骨のトゲ(骨棘)が発生しやすくなります。これが痛みや可動域の制限を引き起こす原因となります。

この骨棘を除去し、肘の動きを改善するために行われるのが「肘クリーニング手術(後内側デブリードマン手術)」です。MLB(メジャーリーグベースボール)の選手において、この手術の効果やリスクを調べた最新研究が発表されました。

研究では2007年から2022年の間に肘クリーニング手術を受けた39人のMLB選手を対象に、術後3年間の成績や故障率を分析しました。その結果、復帰率は82.1%と高水準であるものの、投球速度の低下や再手術のリスクも示唆されました。

【手術後の復帰率と成績は?明るい結果と見逃せない課題】

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研究結果によると、39人中32人(82.1%)が手術後にMLBの試合に復帰し、平均復帰期間は176日でした。特に投手では26人中20人(76.9%)が復帰を果たしています。肘クリーニン3.JPG

しかし、術後3年間で10人(38.5%)の投手が肘関連の故障で再び故障者リスト(DL/IL)に入ったことが明らかになりました。また、5人(19.2%)はその後、より大規模な「尺骨側副靭帯(UCL)再建手術」を受けることになりました。

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成績面では、1シーズンの術前・術後の比較では防御率(ERA)や与四球率(WHIP)、投球回数に有意差は見られませんでした。しかし、3年間の経過観察では速球の平均球速が94.4マイルから92.8マイルに低下(p=0.02)しており、長期的なパフォーマンスの維持に課題が残ることが示唆されています。

【肘手術の今後の展望とスポーツ選手へのアドバイス】

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この研究は、MLBレベルのアスリートにおける肘クリーニング手術が短期的には有効であることを示しています。高い復帰率と手術後の安定した成績は、手術の有用性を裏付けています。

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しかし、再発率や速球速度の低下といった課題も無視できません。特に、肘にかかる負担が大きい投手にとっては、術後のリハビリと適切な負荷管理が重要です。

選手や指導者は、手術を検討する際に、短期的な回復だけでなく、長期的なパフォーマンス維持にも目を向けることが求められます。専門医と連携し、手術後も定期的な肘のチェックを行うことで、再発リスクを最小限に抑えることができるでしょう。

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引用文献

Wollenman, C. C., Davis, P. J., Lane, G. C., Fox, J. A., Bowman, E. N., & LeClere, L. E. (2024). Outcomes and performance following posteromedial elbow debridement in Major League Baseball players. Journal of Shoulder and Elbow Surgery, 33(5), 2457-2462. https://doi.org/10.1016/j.jse.2024.05.035

 

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